原油価格高騰

ガソリンの店頭価格が一斉に値上がりしている。
原油価格が過去最高水準で推移しているため。
原油価格高騰は生活にどのような影響を与えるのか?

■世界の原油価格指標
 
原油価格の3大指標として米国産WTI、欧州産ブレント、中東産ドバイがある。
その中でも米国産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は取引量と参加者が圧倒的に多く、市場の流動性、透明性が高いとされているため、その価格が世界の代表的な原油指標となっており、欧州産ブレントや中東産ドバイをはじめ、他の原油指標にも影響を与えています。なお、価格は1バレル(159リットル)で表示されている。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所NYMEX)に1983年に上場され、活発に売買されています。最近は石油トレーダー、石油会社等石油関係者よりも、金融機関、個人投資家等投機筋の動向が相場に大きな影響を与えている。

■なぜ原油価格は高騰したのか?
 過去2回の石油危機あるいは湾岸戦争の際は、産油国の供給不足が主たる原因でしたが、今般の原油価格高騰は、次のような要素が絡んだ複合的な要因によっておきたと考えられます。
 
1.需給のタイト化 
世界的な景気回復を受けて、原油需要が急拡大している。特に経済成長率の高い中国が需要増加の先導役になっている。一方、供給面については、過去数年に渡る生産調整が需給の構造的タイト化を招き、需要の飛躍的拡大に対応して超短期間で生産能力をあげることができなかったことは間違いない。しかしながら、2004年4月以降を見ると、需要を十分上回る供給が行われており、今回の原油価格高騰の原因と特定することは難しいと言わざるを得ません。
 
2.心理的供給不安
1に述べたような需給環境の中で、依然混乱が続くイラク情勢、サウジアラビアでのテロ、ナイジェリアやベネズエラの混乱あるいはロシアの石油会社ユーコスの経営危機など、供給不安を高める出来事が多かったことも今回の原油価格高騰の原因となっている。
 
3.投機筋の動き
WTI原油を上場している米NYMEXの参加者の内、約7割が実需を背景にした石油関係者、約3割が投資ファンド個人投資家、金融機関等の投機筋と言われている。今回は、この投機筋が、需給超過による原油価格上昇に敏感に反応し、その資金が大量に市場に流れ込んで原油価格を需給バランスの実態以上に押し上げたと言われている。


■日本経済への影響は? 
最近まで、原油価格高騰が日本経済に与える影響は大きいとして、為替市場では原油高=円売りという捉える向きもあった。原油について日本の輸入依存度が高いこと、また日本が経験した2度の石油危機(1973年、1979年)の際の混乱が、まだ市場参加者の記憶に残っていることがその理由と思われる。
しかし、今回の原油価格高騰が日本経済に与える影響は、以下の点から、むしろ米国に比べ相対的に小さいと考えられる。
すなわち、現在はその当時と比べ、脱石油・省エネ(エネルギー効率の改善)がかなり進んでおり、例えば、実質ベースで1億円のGDPを稼ぐために必要な原油量は現在では55キロリットルと、1980円当時の106キロリットルに比べ半分近くまで低下しています。また、省エネを進めた結果、現在の日本の原油需要量は極めて安定していることも注目される。また、同様に石油危機時に比べ、高い水準の石油備蓄量が確保されていることも見逃せない。
このように脱石油を進める中でも、GDPは石油危機時の約1.8倍となっており、日本の原油価格高騰に対する耐久性が高まっていることが分かる。
「価格上昇」という面からは、今回円高により輸入原油価格の上昇幅が抑制されていることも、価格高騰の与える影響を小さくしていると言える。第2次石油危機の際に1バレル40ドルを超えるレベルまで原油価格が上昇した1980年当時は現在よりかなり円安であり、1980年のドル円のレンジは、202円95銭〜264円でした。
しかし、原油価格高騰が石油輸入国に悪影響を与えることは、大なり小なり間違いない。日本の原油価格上昇に対する耐久力が高まったとはいえ、原油価格がこのまま高止まりする、あるいはさらに高騰するようなことがあれば、日本経済への打撃も大きなものになる可能性はある。